 |
| ?. はじめに |
| |
近年開発された単極型高周波によるたるみ治療(サーマクール)は、非侵襲的でダウンタイムがほとんどないため広く行われるようになりました。ここではその原理と治療の実際について述べます。 |
| |
■顔面加齢変化と非侵襲的たるみ治療のあゆみ
老化とともに皮膚は膠原線維・弾力線維が張力と収縮力を失い、皮膚の柔軟性が消失する。同時に皮下脂肪組織にも同様の変化がおこり緊張が失われる。そのため皮膚・皮下組織が重力とともに下垂し、皮膚支持靭帯(retaining ligament)の上部に膨隆した状態がたるみと考えられる
これを改善するための従来法はフェイスリフト手術であり、皮膚を切除し、皮膚の表面積を減少することにより皮膚の緊張を回復させていた。
一方、近年の非侵襲的なたるみ治療が発展し、広く行われるようになった。その原理は、真皮層の膠原線維を熱収縮させ、皮膚表面積を縮小、皮膚の緊張を高める。さらにその刺激後の創傷治癒過程で新しい膠原線維を増殖させ、皮膚の若返りを得るものである。
皮膚の表面を傷つけず真皮膠原線維を増加させる目的で、約10年前から開発されたのが各種ロングパルスレーザーである。それらは非侵襲的治療法の道を開いたが、高いエネルギーを十分選択的に真皮へ与えることはできなかった。
そこでより深部に到達する新しいエネルギー源として採用されたのが、可視光より波長の長い電磁波である高周波(=ラジオ波Radio Frequency)と赤外線である。これらは大量のエネルギーを真皮に選択的与えることができるので、皮膚の引き締めに有効な方法である。特に高周波治療は強い引き締め効果が得られるので、2004年以降本邦でも急速に広まった。
高周波治療機器には双極型と単極型があり、単極型の方がより高いエネルギーを発生させることができる。高周波単独照射をおこなう代表的機器がサーマクール(ThermaCool? System, Thermage社、米国)であり、比較的強い引き締め効果が得られる。他には高周波と光エネルギーを組み合わせて照射する治療機器(Aurora, Polaris)もあるが、これらの高周波エネルギーはサーマクールより低い。
また最近では、プローブを皮膚の表面上を動かしながら徐々に真皮層に熱を加える単極型高周波治療器ラディエイジ(Radiage, Ellman社)が紹介され、高周波治療の幅が広がっている。 |
|
 |
| ?. サーマクールによる治療の実際 |
| |
1.機器
サーマクールは高周波発生装置、クーリング装置とハンドピースから成り、その先端は正方形の薄い膜(3.0cm_)で、これを皮膚に接触させる。通電すると高周波が発生し、皮膚表面から2−4mmの深さの真皮層を60℃前後に熱することができる。同時に冷却ガスが膜の内側に噴射され、皮膚表面温度の上昇を防ぎ、表皮を熱傷から保護する。
真皮層では膠原線維の一部が熱変性を起こすことで収縮し、皮膚面積が縮小する。さらにその後6カ月の間に創傷治癒過程により膠原繊維が産生されることで、真皮内の膠原線維量が増加、皮膚厚が増加し、皮膚の若返りが得られる。
高周波電流はさらに深部にも到達し皮下の線維ネットワークにも作用している。したがってタイトニング効果は2次元的にも3次元的にもおこるため、たるみによる変形を効果的に修正されると考えられる。
ハンドピース先端に付けるティップは何種類も作られており、顔面、頸部に使用するのは3.0cm2のfast tipである。0・25cm2のティップは熱発生深度が浅く上眼瞼の薄い皮膚専用である。またより深部にエネルギーを与える体部用のCLティップも作られている。 |
| |
2.術前診断
たるみが強い部位は患者によって異なるので、治療前にどの部分のたるみをより引き上げたいか鏡を見ながら患者とよく相談することが肝要である。
「ただなんとなく顔全体がたるんできた」と訴える患者は自分の問題点を自覚していない場合が多い。そのような時は解剖学的な構造と加齢変化について説明し、どの部分を引き上げると若返って見えるのかを検討する。
また、高周波治療は手術のような大きな変化は得られないことを十分に説明し、過大な期待は禁物だと納得させる必要がある。
化粧を落とし洗顔した後に顔全体の写真撮影を多方向より行う。 |
| |
3.治療前準備
高周波治療では皮膚への通電中、熱感と疼痛を伴うため、従来は局所麻酔クリームを皮膚に30分から1時間塗布し、表面麻酔を行なってから治療を開始していた。しかし筆者らの経験では、表面麻酔を行なうとかえってティップ先端の冷たさを感じることができず、痛みを強く感じてしまうので、現在表面麻酔は行っていない。
十分に洗顔後、顔面皮膚にマーキングを行う。専用のマーク転写シートを皮膚に乗せアルコール綿で軽くシートを抑えると、ティップを乗せるガイドとなるマークが転写される仕組みである。さらに特に引き上げたい部位と方向をペンでマークする。 |
| |
4.治療の手順
皮膚にカップリング液を塗布し、患者の電気抵抗を計測する。
次に高周波の出力を設定する。まず皮下脂肪の厚い頬で試し、患者が少し痛みを感じる程度の出力に設定する。マーキングに沿ってティップを動かしながら1ショットずつ高周波エネルギーを加えていく。側頭部、耳介下部や下顎部は痛みを強く感じるので、患者の痛みの程度を聞きながら出力をその都度低く調整する。
一通り顔面全体への治療が終わったら、術前にマークしたたるみの強い部位への治療を行う。1回目よりもやや低い出力で複数回高周波照射を繰り返すことで、その部位の真皮膠原線維の熱変性をより得ることができる(Multiple Pass Method)。同一部位を重ねて照射する時はその前の照射から数分待って行い、熱傷を作らないよう注意する。 |
| |
5.治療後の処置
治療後、マーキングを除去する。市販の皮膚用ステインリムーバーは刺激が少なく、マーキングが比較的容易に落ちる。皮膚の状態を確認し、紅斑が出現している場合は冷タオルで10〜20分冷却する。皮膚に特に異常がなければ洗顔し、化粧が可能である。 |
| |
6.術後経過
高周波治療の副作用のほとんどは紅斑、腫脹である。紅斑は術後数時間で消失し、腫脹が出た場合も数日で消失する。治療部位に数日間鈍痛が残る場合もある。最も注意が必要なのは熱傷で、水疱を形成することもある。その場合、ステロイド軟膏を処方しガーゼで保護すれば1,2週間で上皮化をみる。その後数ヶ月間炎症性色素沈着を生じるのでハイドロキノン軟膏を塗布し早期消退を促す。
高周波治療は非侵襲的治療であるから患者は副作用があると予想していないことが多い。したがって術前に熱傷の可能性について十分説明を行い、患者の理解を得ておく必要がある。
また術後経過を、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に観察し、写真撮影を行う。患者は術前の状態を覚えていないことがほとんどで、治療効果を実感していないことも多い。術前、術後写真を比較して効果を実感させることも重要である。
一度の治療で十分なリフトアップ効果が得られない場合は、6ヶ月以上待って次の治療を行う。 |
|
 |
| ?. 考察 |
| |
高周波によるたるみ治療(サーマクール)では、わずかな変化を徐々にしか得られない。顔面皮膚皮下組織の下垂を改善するには、外科的な除皺術が圧倒的に有効である。しかし外科的治療はダウンタイムが長く、外貌の急激な変化をもたらす。そのため長期間の休暇が必要で、手術を受けたことを人に気づかれる可能性がある。
たるみの改善を希望する患者全てが外貌の大きな変化を望むわけではなく、むしろ人に気づかれることなく、より自然に若返りたいと希望する患者が圧倒的に多い。また仕事のため長期間の休暇がとりにくい、手術に対し恐怖感があるなど、非侵襲的治療に対するニーズは高くなる一方である。それに応えるのが高周波による皮膚の引き締め治療である。
中高年でたるみの目立つ患者に対しては、治療を何度も繰り返すことで、よりたるみを引き上げていくことが期待できる。また20台後半から30台のあまりたるみが目立たない若年者でも、たるみが顕著になる前に予防的に皮膚を引き締めたいと希望するものに対しては有用である。このように高周波治療は外科的手術に替わるものではないが、美容治療対象者の裾野を広げる役割も果たしている。
またより痛みが少なくなるようサーマクール機器自体の進歩も著しく、より効果が発現するよう治療法も発展している。さらに顔面、頸部だけではなく、体部の輪郭補正にも使えるように新しいティップが開発されている。
従来のサーマクールだけではなく、最近はラディエイジが出現し高周波治療は新しい展開をみせている。患者や医療機関の選択肢が広がることで、より快適で有効な治療法が確立されると期待される。 |
|
 |